花の絵本(1) ノギク( 野菊 )のなかま |
1. ノコンギク (野紺菊) |
遠い山から吹いてくる 小寒い風にゆれながら 気高く清く匂う花 きれいな野菊 うすむらさきよ |
秋の運動会でこの唱歌を聞きながら体操やダンスをしたことが思い出されます。戦中・戦後を過ごした昭和の人ならこの歌詞を知らない人はいないでしょう。作詞された方は、石森延男さんという児童文学者(代表作『コタンの口笛』)で、石巻市立門脇小学校の校歌の作詞者でもあります。現在、石巻健育会病院が建っている大街道は、以前は門脇村でした。隣にある石巻市立釜小学校も、昔は門脇小学校の分校でした。 |
籠峰山のノコンギク |
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ノギクと呼ばれているキク科の植物は、日本には数多くあります。その中で、最も目につく野菊とは言えばノコンギクでしょう。秋の初めから終わりまで咲き続ける代表的な野菊で、さまざまな濃さの青紫の色で、日本の晩秋の野山を素朴にやさしく彩ってくれます。ノコンギクは北海道から九州に分布しますが、北方系の大型になり葉の形が異なるものをエゾノコンギクとして区別することもあります。石森さんは、北海道の出身ですから、両方とも見ているのかも知れませんね。歌詞に「うすむらさき」とありますので、まずノコンギクを紹介しました。 |
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2. カントウヨメナ (関東嫁菜) ヨメナを摘んで「お浸し」にしようと思っていましたが、いざ念願がかなってようやくヨメナに逢って見ると、摘み草には向かず、食べられそうにありません。調べてみると、本当のヨメナは暖温帯の西日本に分布し、私が逢ったのはヨメナはヨメナでもカントウヨメナで、関東以北に分布し、一般には食べないとのことでした。 田んぼや畑の畔や湿った土地に生え、派手さはないけれど、嫁の名の付く分だけチョット目立つ花を、冬を前に健気にも咲かせる、食べるよりも見て楽しむ草花です。 カントウヨメナとノコンギクは花の色が似ていますが、種子のわた毛を見るとすぐに区別がつきます。カントウヨメナのわた毛は非常に短く、わた毛が無いように見えます。 手元にある都道府県別の分布表を見ると、カントウヨメナの各県の確認は不明な点が多いようです。花を見ている人がいないか、少ないのでしょう。 冬近く目立たない環境に咲くカントウヨメナを見つけて、ご覧ください。きっと、元気をもらうことができます。 |
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追波川河川敷のカントウヨメナ |
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3. アワコガネギク (泡黄金菊) 比較的乾いた環境に見られる黄色の花をつける野菊のなかまです。葉は園芸品種の菊によく似ていて、小さい花をたくさんつけ、崖や岩のある場所では自然の懸崖菊(けんがいぎく)となって、風情のある姿を見せてくれます。道端では1.5m以上に伸びて枝分かれし、ときには1,000個以上の頭花をつけることもあります。頭花は直径1.5cmほどで10数個ずつ集まって咲きます。一つの頭花は、周りの舌状花と中心部の管状花を合わせて100個ほどが集まっている小さいヒマワリ型の花です。 本州、九州に自然分布し、宮城県では奥羽山脈側に少なく、北上・阿武隈山地側に多く見られます。県境を越えて西側の山形県には記録がありません。北限は岩手県で北上高地の南部だけに見られるようです。京都ではかつての自生地であった菊渓(菊谷川)にちなんで「キクタニギク(菊渓菊)」と呼ばれており、栽培されることがあるそうです。 |
キクタニギク |
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4. ハマギク (浜菊) 美しさとたくましさを備えた大型の野生の菊、三陸海岸を代表する植物の一つです。青森県八戸市鮫島から茨城県までの太平洋沿岸だけに自生しますが、分布の中心は三陸海岸です。県北の磯浜海岸では普通に見られますが、仙台の海岸になるとぐっと少なくなります。 海岸の崖や岩場の割れ目に生え、大きな株をつくって、つやのある厚い葉を重ねるように付けた茎のてっぺんに秋の彼岸ころに花をつけます。まわりの岩や潮風に調和して咲く大きくて真っ白い花は、日ごとにその数を増やしながら三陸海岸の秋の表情を濃くしていくようです。頭花のまわりの舌状花は咲き始めてから少しずつ伸びて、数日かかって3cmほどの長さになります。 ハマギクは根もとから盛んに分枝し、多くが自然に半球状の株になります。葉が枯れて落ちても茎はそのまま生きて、来年の芽をつけたまま冬越しします。つまりハマギクは、「木」なのです。世界共通の名前は、「ニッポナンテムム・ニッポニクム」といい、他になかまのいないキク科の1属1種の珍しい植物です。 |
ハマギク |
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5. コハマギク (小浜菊) |
雄勝町大須浜のコハマギク |
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