宮城県植物誌
関係資料

中間温帯の植物
(佐々木豊氏遺稿より)

花の絵本(3)  マンサク

  マンサクは「先ず咲く」からついた名と言われ、「草マンサク」と呼ばれているフクジュソウと共に、木の花として春を告げる花の代表である。
水の森公園
(2022年3月)
撮影:阿部功之

 私が子どものころ「マンサク」と呼んでいたのは、庭でいちばん早く咲くレンギョウであった。石巻の牧山にはマンサクはないが、春早く黄色い細かい花をいっぱいつけるアブラチャンのことを、「マンサク」と言っていた子供たちに会ったことがある。 
 本物のマンサクに初めて出会ったのは、牡鹿半島の桃浦にキノコ採りに行った時のことである。春になったら花を見に来ようと思っていたが、ひとりでは勿体ないので「マンサクを見る会」を計画した。当日は雪の降った後だったが、20人ほど集まって来た。よい天気で、かれんな黄色い花が真っ青な空と真っ白い雪に映えて、すがすがしい景観を味わうことが出来た。会は大成功であった。
水の森公園
(2022年3月)
撮影:阿部功之

 マンサクは、高さ5m程になる落葉の低木で、切り紙細工のような黄色い小さな花が数個集まって咲く。花びらが4枚、雄しべが4本、がくも4枚と4が基本になっている花であるが、ルーペで見た雄しべがおもしろい。花粉を出すために丸いふたを開くようにするし、かざり雄しべもついている。
栽培品
(2022年3月)
撮影:大越秀樹

 石巻地方のマンサクの分布は地域的な偏りがあり、人家や道路沿いで見ることも稀で、少し山手に入った場所でないと見られない。生育環境は、アカマツが混じるような明るいコナラ林である。
例年二、三月になると、石巻地方では必ずと言っていいほど、雪が降る。そして、林床が白くなるほど積もれば、マンサクの見ごろである。
 その時期に、石巻市なら水沼、荻浜地区、雄勝町の原、水浜、北上町の翁倉山、女川町なら尾浦地区を歩けば、それぞれの地域の早春を表現する鮮やかなマンサクの黄色に出会えるかもしれない。
女川地区(2002年3月)
翁倉山(2002年3月)

*仮雄しべ,仮雄蕊のこと:参照「植物生態観察図鑑」
http://mizuaoi.photo-web.cc/314mansaku.htm

付記 : 本稿に使用するため、マンサクの花を近所の仙台市水の森公園に撮影しに行きました。「かざり雄しべ」がわかる写真とのリクエストがあったものの、マンサクの「かざり雄しべ」はわかりにくく、残念ながらそれとわかる写真は撮れませんでした。
 その後、山形県酒田市でマルバマンサクの花を撮影する機会に恵まれ、佐々木先生がおもしろい!と感じた、雄しべの様子と「かざり雄しべ」がわかる写真が撮れました。佐々木先生がルーペで先に観察したのはこのマルバマンサクの花の方だったのかな?とも思った出来事でした。(阿部功之)
 
マルバマンサクの花の中心部 : 花弁の基部,開裂した雄しべと雄しべの間に棒状の「かざり雄しべ」が分かる。 

山形県酒田市(2022年4月)撮影:阿部功之

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